厚生書店で買った「水声通信No.18 阿部良雄の仕事」を拾い読み。四方田犬彦の回想の中に出てくる、「二十三歳のナダールが、二十二歳のボードレールの情婦だと知らずにジャンヌ・デュヴァルに手をつけてしまって以来、二人がどのように親密な交友を続けてきたかを、遺されている書簡を通じて論じた」阿部良雄の文章が掲載されているという雑誌写真装置10号が欲しくなる。悪魔的なミューズを巡る近代芸術の先駆者二人の関係はどんなもんなんでしょうかね。興味津々です。とはいっても、無理に探したりはしません。古本屋ですから、日々気をつけて暮らしていれば必ず自然にその本に出会えるのです。そして、自然と出会った時が、読み時、と思う事にしております。
……レンズ越しにボードレールを見つめるナダール、を見つめるボードレル、とナダールを交互に見やるジャンヌ・デュヴァル、というわたし好みの構図。あなたをみつめるわたし、をみつめるあなた、をみつめるまたべつのあなた、をみつめるあなたをみつめる……。
個人的には、よりハゲチャビン度が高いエティエンヌ・カルジャの撮影したボードレールの(一番有名な)肖像写真の方が好きですがね。目つきも、半端ないです。まさに憂愁鬼。ここで詩の一編でもそらんじて終わりたいところですが、あたしはそんな気障はいたしません。阿呆バレるし。