象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

人には手をさしのべよ

とは云うものの、簡単には手をさしのべる事が出来ないのは、これは、誰しも、同じ事だとは思うのですが……。自分と云うものの壁を乗り越えて、向こう側にいる人の手を握る前に、どうしても、ひとことふたこといやごとを云うのは、そしてそれを甘んじて聞かなくてはならないのは、まあ、蛞蝓的な愛の儀式だと思う事にしています。生きねばならぬーーという言葉に納得する、という茶番。

 

ほんとうの孤独者がいるとすれば、両手をジッと見つめて考え込むだろうね。寂しさに耐えかねてこの手を世界に向かって差し出せば、安物のロマンスを手にする代わりにあの豊かな沈黙を失うことになるだろうけれど、それでも……。救われるのはわたしなのかあなたなのか?

古本屋の日記 2012年3月20日