夜になって降り出した雨の音を聞いているとなかなか寝付かれなくなりました。ウイのお湯割りが少し足りなかったのか、それとも何か、自分でも気づかない心配事が夜に紛れてわたしを苦しめるのか、とにかく、ポタポタ、タンタン云う雨音に耳を澄ましていると、寝たいのに眠れない、眠れないのに動けない、タンタンポタンポタン、あかんね、寝よらへん、そこは、毎日暇な古本屋の事ですから、明日に用事があるでなし、寝ようと寝まいとどっちでもいいので他人事、まあ、退屈なので、夢の代わりに「雨つぶ小僧」というお話はどうだろうかと考え始めるのです。「雨つぶ小僧はなかなかの音楽家なのです」……少し昔風、少し賢治風?の書き出しを考えて、さて、黒い雨雲に乗ってやってくる悪戯な少年?鬼?化け物?の奏でる音楽は一体どのようなものであろうかと考え、ポタポタ、タンタンいう雨音に耳を澄ませて、やっぱり姿は雷の子供みたいに角が生えているのがよいなあとか、こいつは友達もいない孤独な少年であろうか、などど考えているうちに、ポタンポタンがポタァァァン、ポタ〜ン、となって、いつしか、ぐっすり、眠ってしまっているのです。それで、目覚めるともう昼前。いつの間にか雨が上がって、なんだか、ちょっと、爽やかそうな天気。わたしは部屋の窓から明るい外の世界を眺めながら、どこかへ行ってしまった「雨つぶ小僧」のことを思って、なんだかこの天気はすごく損なような気持ちになるのです。では、こけし学校3回目です。
南部系の工人、佐々木覚平(昭和8年〜平成19年)の作。首がカタカタと動く、いわゆる、キナキナ、と呼ばれるものでしょうか。うん。たぶん、せんせい、そう思うな。この、ぼん、すぅっ、とした形は、なかなか握り易い形です。もともと、無彩の、子供のおしゃぶりが南部系の原型といいますから、この握り易さも、子供向けかも。ちなみに本作のサイズは18cmほど。べたっと塗りつぶされたおかっぱ頭はワカメちゃんのようでもあります。この子なら、きっと、頭をカタカタいわせて「雨つぶ小僧」のお友達になってくれるのではないかと思って、まあ、選んで、紹介してみたのですが……。