「要するに、だれも明日のことはわからん、ちゅうことやな。」ー誰もが知っていることを、訳知り顔で話すフルカワの言葉。
眠りそうな感じで、いつも通り古典会の席に座ってぼんやりと流れてゆく本を見ていると、ふと、これは儲かるんじゃないかと思えるものが目に止まったのです。タイミングよく、それ(……まあ本ではないのですが)を得意とするフルカワが、さっきまでわたしの横で生きることの真理を発見したとぼそぼそ話していたちっちゃいおっちゃんが、煙草を吸いに行って席を外していたので、これは安く買うチャンスだと思い、わーいラッキーと思いながら椀伏の札に金額を書こうとしたのですが、さて、幾ら入れようかと考えて、なぜだか、ぱたっと札を置いて、喫煙室にふらふらとフルカワを呼びに行って、ほにゃららが出てるでとよせばいいのに教えてやり、さらに、出発しそうな列車だか船だか市場だかを呼び戻してわざわざフルカワに入札する時間を作ってしまったので、結局、その儲かりそうなものはフルカワの手に落札されたのでした。その直後、よく考えたら自分が買うチャンスをみすみす潰してしまうなんて馬鹿だなあと思いながら、まあ、自分ばっかり儲かってもしゃあないと、ぜんぜん自分は儲かっていないのに変な理屈をこねてみて、やっぱり残念なことをしたと激しく後悔したのでした。
いま、書きながら、自分ばっかり儲かる世界を想像してみると、なかなか悪くないものだと、思う、のですが。ぜひ、そのような世界に生きてみたいと、思うのですが。