象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

手放す。

安くで手放したものが、遠くの市場で出世したと、風の便りに聞く……。

 

負ける、失う、ということの繰り返し。

負けたり、失ったりすると、ぱんと小さな破裂音がして、今まで自分の勝手な想像で膨らみ歪んでいた世界が急に形を整えて、あるがままの、そっけない姿を現す。テレビはテレビ。柱は柱、クラインはクライン、青い空は青い空、アスファルトはアスファルト、その前に、下に、その上に、ただなんでもない自分が立っているのを発見するのは、いくらそれを繰り返しても、不思議で、新鮮な感覚なのです。自分の中に溜め込まれた意味やなにやかやを、手放す。それは普段なかなか出来ないことなのだけれど、どんな人にも必ず訪れる敗北や喪失が強く握った手を自然に開いて、かりそめの自分を捨てさせてくれるのです。

 

勝つか負けるかに、賭けるのではなく、

負けるか、負けないかに、賭ける。

 

うーん。そりゃあかんな。

古本屋の日記 2012年1月14日