象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

待ち時間に。

夜の手術の、長い待ち時間……。

母を手術室に見送ったあと、何もすることがなく、何か考えてもしょうがないので、「新世界のユートピア スペイン・ルネサンスの明暗 増田義郎著 中公文庫」という本を読み始める。コロンブスが発見した、明るく、美しい、無垢のインディオたちが、だんだんと身勝手な、暗い欲望に溢れた文明社会?に痛めつけられてゆく様を、たとえ遠い昔の話だとしても、文明の側にいるわたしが、他人を責めるように腹立たしい気持ちで読み進めるのはなんだか変な感じがしますが、何か考えてもしょうがないし、何もすることがないので、スペイン人の身勝手なことにイライラしながら、休まずに、読みつづける。

アメリカで最初に原住民が絶滅した地域はバハマ諸島である……、予定より早く、良好な結果で戻って来た母を迎えた時に読んでいたのは、そんな、身もふたもない一文でしたので、喜ばしいやら、腹立たしいやら、なんだか複雑な気持ちで本を閉じて、読書のTPOについて考えさせられました。

古本屋の日記 2011年12月15日