筑前福岡藩士、二川相近(すけちか)の書と思われる「無為」の二文字。ぼろぼろの掛け軸ですが、気に入って、手元に置いてあります。「無為」というと、ぼーっとしているうちに時が過ぎてしまう、古本屋にはありがちな日常のことを指していそうですが、それ以外にも、自然のまま、あるがまま、と云うような意味や、生滅・変化しないもの、という仏教的な意味合いもあるようです。さらっと書きましたが、膝元にはもちろん「新明解国語辞典」が開けてあります。日記を書くのも大変です。ぼーっと考えているだけならどんなに間違っても平気ですが、一応、誰かが読むかもしれないと思うと、ありのままの無知をさらけ出すというわけにもいかないのです。ああ、野で風に吹かれる草のように、にょっきり生えて、ふらっと揺れて、それで誰も知らない間に枯れてしまうのであれば、どんなにか気楽な人生を送れるかと思いますが、なかなかそうはいきません。あるがままではない自分こそ、あるがままの自分だと思うことにしています。なんだか、相田せんせいみたいに、なってきました。
無為
古本屋の日記 2011年5月7日