當署管内には「釜ヶ崎」「煉瓦裏」「赤壁」「新臺彎」などと呼ばれている幾つものスラムがあり就中「釜ヶ崎」は世界的に有名であります〜と書かれた`はしがき`ではじまる49ページほどの小汚い冊子ですが、買った雑誌の束の中から見つけた時は久々に、古本屋としての満足感を味わいました。釜ヶ崎に関するルポや写真集は幾つも見ましたが、戦前の、所轄警察署が発行した資料があるなどとは、少しも知りませんでした(とは云うものの、なにかの本で触れられていたような気もしますが記憶がはっきりしません)。というわけで、これからじっくり読んでみようと思うのですが、皆様にも少しだけご紹介。
(今宮警察署=現在の西成警察署管内全図)
(写真解説より;モルヒネ患者が路傍の柵根に憩ふ處であります。注射後の元気恢復の者、軽症の者計りの集団であります)
なかなか、好きそうなおじさんたちばかりの記念撮影的な一枚。この写真では解りにくいですが、皆、打たなきゃやってらんねえ的な、暗く平坦な眼をしております。世界は悲惨だが、その分逞しい、なんて思うのは、飽食の側にいるからでしょうか?
あとはまだ読んでませんので、目次を抜粋
置き去られ/誘惑の魔の手に掛かった娘/辻淫売の悲哀/モルヒネ患者/天下に廃物はない
巻末の現況調べは、机上の統計、想像の報告ではなく、釜ヶ崎の住人自らが筆で、或は口頭で答えたものであることが強調されております。
(昭和四年の釜ヶ崎を円で表すと……)
のたれ死には55人。男の女、とは?
※と、書き終わって調べたら、この本は、国会図書館のデジタル画像で見れることがわかりました。興味のある方はそちらで詳細ご覧下さい。というか、少しガッカリ。自分だけが珍しい本を見て悦に入ることが、できにくくなった、この世を、古本屋は、少し、恨む。恐るべし、電子書籍。