象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

光景

大きな居酒屋のカウンターに座りビールジョッキを洗う女の子をぼんやり眺める。その、無心にビールジョッキを洗っている女の子の姿を美しいと思う。ビールジョッキを洗う一連の動作の流れ……。しばらく、ちびちびと冷たい日本酒を飲みながら女の子を見つめつづける。そして、そんなこと、とひねくれ者の反転、ビールジョッキの女の子が美しいと思う自分に懐疑的になる。なにか、この空間を劇的なものと感じすぎてやしないか?感傷的すぎやしないか?そしてもう一度彼女をよく見てみる。ビールジョッキがテンポよく洗われてゆく。洗っている。水道から水がじゃばじゃば流れている。女の子は手元を見ることもなく、どこか向こうの方に顔を向ける。

古本屋の日記 2016年8月22日