象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

指先。

指先の小さな傷をぎゅっと押すとそこから最初はスパゲッティが出てきて最後はそれが甘エビになるという奇妙で印象深い夢で目覚める。さまざまに予定が変更されぽかっと何も無い一日。古書会館も、年の瀬は何だか寂しげです。いつもならふて寝ふて酒ですが2013年の最後はしっかり仕事をしようと倉庫の大掃除。み兄に譲って頂いたスチール棚にとりあえず床に転がる諸々を詰め込み、床をはきはき清める清める。そうだ、来年からは、毎日の決められた労働に喜びを感じることの出来るルーティン古本マンとなるべく努力しよう、一生懸命、日々の暮らしに邁進しよう。はきはきしながらそう思うもやっぱりははははは、そんなことあるわけないよね。だってわたしは、こんなこと年末に云うべきではないかもしれませんがね、だってわたしは日々の暮らしを大切にしていればいつか報われるなんて少しも信じてはいませんし、人間が思うほど人間は良いものだなんて少しも考えない善なるもの美なるものすべては人間の関知しない遠いところにあって生きる為に働けば働くほどかえってそのなんか人間の関知しない遠くの秘密から遠ざかって行くばかりなんだから……、とまで考えて、床をはきはきしながら、まあ、でも、倉庫の床が人の歩ける状態であることは、そんなに小難しく考えなくてもそれなりに良いことなのかもしれませんよと象々が象々に話しかけ、さらに整理整頓、げんげ姉さんにもらった古い木の本箱を動かそうと持ち上げた時に指先に刺さったササクレをぐぐっと押し出すとあまり鮮やかでない血が滲み出たのでした。

古本屋の日記 2013年12月28日