象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

冬の雨。

雨。冬の雨。……。榎木さんの石の階段を登りながらこの世で十人ほどしか読むことのなかった、そんなタイトルの小説を書いたのはいったい誰だったかと考える。どんな内容だったのか憶えていない。ただ冬に雨が降るたびにその言葉のままタイトルの音の響きをを思い出す。冬の雨の日にはいつも、古い時間の向こうから響いてくる音響に耳をすます。

 

きっとその人もわたしのことなど思い出しもしないでしょう。

古本屋の日記 2013年12月13日