象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

バスの中で鶏もも肉の惨劇を思い出す。

とくにくれろと云った訳ではないのに母からなぜか小遣いを貰う。いらんいらんと云うももうとけもうとけ云うのでせっかくだから貰う事にする。四十四歳。スキンヘッド。七十を越える母から小遣いを貰うのが似合うとは思えませんが……これは、もしかしてアホぼんと云えるかもしれないと思い「おかあはんえらいおおきに」と、寛美先生風に照れ隠しに云ってみる。今日はケチらんとちょっとええとこ飲みに行きましょか?と云う思いを見透かされたのか「無駄遣いしたらあかんで」と釘を刺される。昔も今も云われる事は同じである。

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星田のバスからハラナカの家のあった場所を眺める。今は別の人が住む別の形の家。かしわ屋になった高校の先輩、なおこはん、よう喫茶店奢ってくれたおばちゃん、ちょっと怖かった兄ちゃん、みんな何所におるんやろか。パチンコ帰りのおっちゃんによう小遣いもろたな。先輩の店手伝ったんはええけど、三十本もいっぺんに鶏のもも肉焼けるロースターで、全部丸焦げにした事あったな。その夜居酒屋でももがももが云うて泣いて、先輩に笑われたなあ。あんだけのもも肉パーにしたんは人生であれが最初で最後やろな。

 

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四十を越えると、なんや未来に希望なんか持たんようになって、昔の事だけがあたたかく懐かしく思われる。老けんの早いんやろか?

古本屋の日記 2013年8月31日