象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

暑さと読書。

暑さと咳で眠れない。これはいかん何か本でも読んで気を紛らそうと斜め積みの本の一山の中から安吾の「外套と青空」を抜き出し随分前に読んだ事があるなあなどと思いながら文字を追ってゆくと一人の多情な女に複数の男が振り回され最後は主人公の男が「千丈の嘆息のみを知って」終わるという、あるといえばある話、馬鹿馬鹿しいと云えばそれまでの非常にどうしょうもないよなお話で寝苦しい夜にますます暑苦しい気持ちになりましたので、今日は昨夜の轍は踏まぬと倉庫を探し準備万端、用意したのがアドリアン・フルティガー「活字の宇宙」。文字で書かれた言葉の中の意味やイメージにはこの暑さのせいでなかなか集中できそうにありませんが、そのような意味やイメージを人に伝えるための本、にするために必要な、美しき道具としての活字に関する研究ならば、たださまざまに文字のありようを楽しんでいればいいだけでその内容に鬱陶しかったり暑苦しかったりすることなどないはずだと思うのですが……。

古本屋の日記 2013年7月11日