またわたしはひとりで話しつづけている。大声で、誰にも頼まれないのに、わたしがひとりで正しいと思っている運子理論を泥酔の血の巡りの勢いにまかせて話しつづけている。話せば話すほど、一人また一人席を立って去ってゆく。まだお鍋が残っていますよ。……。空の椅子に囲まれる。この煮込み過ぎた魚はなんという名前だろうか?はは。わしは、誰もいなくても平気だよ。わしはわしの発見した真昼のアルコールの真実の鉱脈。ほんとうのことの塊だ。いいさ。君たち、わしを置いて立ち去るがいいさ。からから笑う。もっとしゃべってやろう。ほんとうはわたしもわしを置き去りにして立ち去りたいけれどももうほんとうにひとりぽっちだからどこへも行くあてがない。ひとりでも、もっと喋ってやろう。泥酔の夢に溺れながら目覚めを無限に延期する泥水の眠りの中でまたわたしはひとりで……。
泥水。
古本屋の日記 2013年1月27日