象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

おじさんは涙もろい。

最近、ちょっとしたことで、ちょっとしたニュース、ちょっとした文章、ちょっとすれ違った人の歩きかたや犬コロの右足透明な空気身体の中に記憶されているわたしの過去の水のような映像をほんやりと眺めているとき、米を研ぐとき、空を見ないとき、とくに安堂寺橋の急な坂を下る時、ようするにあらゆる時間あらゆる場所で、やたらと、涙が出てくるのです。いつでも、泣くのをまっているような状態。目の下をちょっと押さえればほらもうはらりと落涙。なんだろうか。病気でしょうか。

 

「そうだよ、聖母様は大いなる母、うるおえる大地でね、それがまた人間にとっての大いなる喜びでもあるんだよ。だからこの地上のどんな憂いも、この地上のどんな涙も、わたしたちにとっては喜びなのさ。自分の涙で足もとの土半アルシン(三十センチ余)もの深さにうるおせば、どんなことにも喜びを感ずることができるようになる。そしてもうどんな、どんな悲しみもなくなるのさ。これはわたしの予言だよ」

江川卓訳 悪霊ーーアトスの修道僧がマリヤに話した言葉。

古本屋の日記 2013年1月22日