ぼけーっとした、本来の自分に戻る。そうだ。わたしは間違っていました。なにかを、ちゃんとしようなんて、そんなこと……。というわけで、ひさびさに、世間様から見放されたような、なんか侘しい寂しい飲み屋めし屋を求めて出撃。チャリであちこち流して、そこだけが、いわゆるホットスポット的に異常に重力の負荷が高く骨組みが歪んでしまっているような面構えのめし屋を見つけ、赤提灯に頭をぶつけながら中に入る。やけにニコニコした爺婆が風呂帰りのおばさんとテレビを見ている。ビールとおでんの豆腐をたのんでわたしもなんかの時代劇をぼけっと見るともなく眺める。しばらく様子見。登場人物についてあれこれ話し込んでいるかと思えば急に思い出したようにキムチがサービスで出てくる。店内を見回す。いいかんじにぼろい。光が、数十年前の埃を含んでいて、全てが、ぼんやり霞んでいる。ふむ。なんか本箱みたいな棚にいつからあるのかわからないような感じのシャケの焼いたのやなんかの煮付けがある。これは、やめよう。しかし、少し、ご飯が食べたいなあと思い、とりあえず、中華そば、それと、ほんのちょっとだけご飯、というと腰の曲がった爺がうれしそうに奥に入り料理開始、出て来たのは予想に違わぬずくずくの中華そば。ごはんは、十分程待ったけど出てこないのでもう一度ちっちゃいご飯、といと、婆が馬鹿にウケてごめんな兄ちゃんいっつもこんな人やねんという。出て来たのは、白いというよりも何か白濁と表現した方がいいようなつやのないご飯。一口食べてみる。1ミリの余裕もなく、不味い。ふむ。これは、と思い、もう一口食べてみる。こんな米は初めて食った不味いと云うよりももうこれは死んだお米。生命を感じないライス。小めしがこんなに不味い店が他にあろうか?ぼろくてあんまり美味くもないけどなんかいい感じなんだよねえという和みを全く赦さない程、不味い。結局、その米の不可解な程の美味くなさのお陰で、和める程度の不味さの中華そばも全部食べる事が出来なくなり。ビールだけはなんとか喉に流し込んでお勘定。大きに。お兄ちゃん。自転車で来てくれたん。ありがとうなあ。ニコニコ。爺婆と風呂帰りのおばさんに見送られあえなく退却。
退却す。
古本屋の日記 2012年12月12日