平塚の海を眺めている夢を見る、いや、平塚の海を眺めている夢ではなく、平塚の海を眺めているわたしを防風林の方から見ている夢ーー。青い海と青い空が遠くで重なり合う冬の海に向かっていつまでも立ち尽くしているわたしを見ながら、ああ、アルゴー船を待っているんだな、いつか映画で、同じような真っ青な広がりに向かっていつまでも待ちぼうけを喰らう男の姿を見た事があるような気がする、何もやってこない、それで、あきらめて、あとで東海道線沿いの屋台でおでんと熱燗ーー。二十四歳の彼は、大阪方面へとガタゴト揺れてゆくブルートレインを見ながらお酒を飲むのが好きだったな。ーー。
海とブルートレイン。
古本屋の日記 2012年11月10日