近鉄百貨店上六店の屋上ビヤガーデンに行く。夕暮れから夜にかけての夏の空の色の変化を眺めながらビールを飲む。満員。無数の肉体が飲み放題のビールを求めて行列する。人が、普段、あれほど求めてやまない個性だとかなんとかはきれいに消滅して、互いに交換可能な、ビヤガーデンでビールを行列する生を、生きている。大学の、体育会の学生。ゲイのカップル。安そうなヤクザ。なんぼでも飲むおばちゃんのグループ。どっから紛れ込んだんやと思わせるようなおっちゃん二人。それから……。わたしでないことは気軽で楽しい。あなたである事は楽しい。もうすぐ、ちょうちんの安臭い灯りと夜の闇に紛れて、お互いの人生を交換して、そ知らぬ顔で別の席に着くのだ。乾杯。うい。
「もう夏おわるで。ほんま、なんもしてないし。やばいで。もう終わりや。やばいで」
浴衣姿の女の子=わたし、の、言葉。