バニッシング・ポイント
これほど大切にさまざまな紙々を保存しているにもかかわらず、というか、さまざまな紙々が保存されてるけど散乱しているせいで、肝心要のお客様に送ることになっているあの紙を見つける事ができない。ありえん。と思いながら台風のびゅーびゅーいう風に翻弄されるように、あたふたと店と云わず住居と云わず探しまくるがやっぱり見当たらない。あの紙はいずこ。こんな本屋とはもう付き合っとれん。馬鹿馬鹿。と憤っていると、暢気嬢から「三方金の本作んのどうしたらええの」とややこしい電話がかかってくる。そんなもんワシが知るわけないやろ天金屋に電話して聞けと叱ると「三方金やのに天金屋に聞くんかいな」とさらにややこしい。天金出来たら三方金も出来るんちゃうんけ」というと「さよけ」といって「二度と聞くかボケ」とほざく。阿呆。ほとんどの人間は人生でたったの一度でも三方金の本の作り方なんか質問されることないんじゃそれよりもああ!あの紙である。数日前に珍しくあちらへ送り出す紙々とこちらへ残っていただく紙々を仕分けした時に、そこらのメモ紙とかわらんようなあの金の紙を一緒に送り出す方へ入れてしまったのか?だとすれば迎えの車は月曜日の早朝今日は台風の火曜日もう遅いなあと思いながらもいいやどっか思いもつかんとこへ置いてるだけかもしれんと瞳を閉じて、眉間の一点に意識を集中、ようし思い出すぞ、思い出すぞ、あの紙の消えたポイントを探り出そうと数日前のわたしの家での行動を逐一思い出して阿呆な本屋の日頃の行動を詳細に追いかけてみると、なんかホワンとした感じで紙をごそごそ、そこらをウロウロ、そんで昼寝。意識の集中により獲得した世界的な視線でこやつを見れば、ほんまいっそこいつこそが消えてもうたらええのにという激しい怒りに襲われて、
古本屋の日記 2012年6月19日