誰かが書いた古い手紙は、もしかしたら有名な作家の友人の友人であるかもしれないから置いておこう。誰かが描いた富士の絵も、もしかしたら横山大観のものであるかもしれないので置いておこう。どこの風景ともわからぬ写真も、もしかしたらこの風景を夢で見たと云う人が現れるかもしれないから置いておこう。この表紙もなんにもないボロボロの無名氏の古い詩集も、もしかしたらなんかの資料くらいにはなるかもしれないし、たまにはその中の一行を口ずさんでもいいし、線引きばかりの哲学書もいつか読めば無駄にはならないし、あ、トイレットペーパーがもうなかったな確か、ピザの宅配は時々玄さんが食べたがるから必要だし、宇宙人はもうあなたの身近にいますとい書いた小冊子は、もしかしたら本当の事を書いているのかもしれないので検討の必要がある。
「ふむ」
と、山村氏は腕組みをした。
「ではいったいどれを捨てると云うのかね?」
飛び石づたいにつづく。