山本竹龍斎の仙楳に、平井汲哉が、近藤尺天の歌、生田花朝女の三角柏の絵を彫った、のを、雨がえらく降るなあと思いながら眺めていると、フルカワから電話。良いもののようにも思えるし、ま、所詮は茶っ葉を急須に入れるためのもんじゃないかとも思う。けれど、手はこんでるよね。おごってくれると云うから、煎茶の道具を100円傘に持ち替えて、なじみの寿司屋へ。フルカワにも、よい箱書きがあれば、うまい具合にいくかもしれないね。売茶翁好みの襤褸人間、なんて思いながらまず、無言のまま、20分は呑む。酒がまわらないと、二人とも、うまく喋れない。刺身と、いきなり茶碗蒸し、寿司は、食わない。それから酒、酒。舌の動きが滑らかになると、お江についてと特攻隊についてとカール・マルクスについてとあと、段々陽気になってくるから、象々とフルカワの貧困についてと、世間はわかってないよねえと、やっぱり最高だねえ、僕(フルカワ)。はは。ここから先は一緒に呑まない人には教えない。再考の人を、深夜のタクシーに押し込んだことのない人にはね。
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