ベリー・ホットとマリアはいった。
ひどい二日酔い。でも、仕事はしんとあかんね。ふらふらしながら本の検品をしつづけていると、なぜか、パスポートをパクられ思わぬロング・ステイになったバンコクの、カオサンロードの、VSゲストハウスのおかまのマリアの艶かしいダンスを思い出してしまいました。疲れているとよく起こる、記憶の、混線。今と関係のない、今。暑いバンコク。いいものあげるからと連れ込まれたハウスの空き部屋で、何故だか急にくねくねと身体を揺すり始めたマリアが、とても暑いわ、ねえ、服を脱がしてよとかすれた声でいうのだ。本当に、気が遠くなるくらい、暑い部屋。へーイ、かわいいベイビー、こっちへいらっしゃい、いい子だからね。こっちへ、いらっしゃい……ほら、服を脱がして、ねえ、とても暑いわ、見なさい、ほら、見なさい、などといいながら手に持たされたのは、「イギリス初期独占の研究」、という、非常に退屈そうな本。寒っ。……。ああ。もう、冬やねえ、……。マリア、お前、冬いうても、知らんねんなあ。
古本屋の日記 2011年12月6日