彼岸の、古本じいさんと今日も会話する。真面目に働くとは、そういう毎日のことを云うのだなあと思う。じいさんは、めずらしく、腰が痛いだの、どこが痛いだのと、弱音を吐いている。寒くなると、辛いねん。あちこち、もうあかんねえ。やめろ、云うことかなあ、というので、もしかしたらそうかも知らんねえと口から出かかって、ぎりぎり、その言葉を封殺する。かわりに、とても丁寧な言葉使いで、じいさんの不安を、やさしく否定する。
いつかわたしも遠いところからチャリでキコキコやってくる古本じいさんと呼ばれるようになるだろう。そうだ、ワシも、やっぱり、若い奴には思いっきり悪態をついて、なんだったら、そいつのチャリを蹴飛ばして転してやろうと思う。若い奴から好かれる古本屋なんて、最低だからな。じいさん、お前も、憂さ晴らしにワシのチャリを蹴ってもいいんだぜ。もちろん、蹴り返すけどな。そのあと、ふんずけるけどな。