象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

ひとりファイティングホーズをとる。

………。

猿に等しい姿のその昔から、弱々しいながらも、自然や、獰猛な獣たちと闘って生き抜いて来たんですよね。生きることは、生存そのものを賭けた闘争だったわけです。それは現代においても変わらぬこと、ただ、その闘争がゆるやかに、ぼんやりとした、もやもや相手に闘われているので、ともすれば闘っているということさへ忘れてしまっている。仕事があって保険があってなんでもあって、けれどそんなものは本当は生きることとは何の関係もないことなのは誰もが承知していることです。なんにもなくても、やはり生きるわけですし、あるいは死ぬにしても、なんにもなく死ぬのです。もやもやして、解りにくいので、すっ裸で道端に突っ立ってイカつい、ヘビー級のボクサーのシャドウボクシングを、真似る。ギュギュっと全身に力をいれて「よし! きやがれ!」と気合いのファイティングポーズ。あおーい青空が大きく広がっている秋のことですから、その声は気持ちよく空に吸い込まれて、誰にも聞こえないのですがね。なぐっても、もやもやには、効かないし。

「ちゅっとあんた、変なもん出してからに。警察呼ぶで」

古本屋の日記 2011年9月7日