朝でも昼でも夜でも、八本足の蜘蛛頼み。
蜘蛛氏はなにも語らず、いつも白い壁にへばりついている。最近、よく、顔を合わせるのだが、しがない古本屋のことなど全く興味のない様子。ひいふうみいと数えて、末広がりの八まで声に出して読む、わたしのささやかな願いごとを聞いているのかいないのか、八本の足を、ピクリとも動かさない。ーーコノ方ノ動イテイル姿ヲ見タコトハゴザイマセンネ。何時モ知ラナイ間ニ現レテ、消エル。ーー蜘蛛氏が、古本屋の願いを聞いてくれるものか、ただ、餌の小虫を待ち構えて息を殺しているだけだ、とあなたは笑うかもしれませんが、手相を見たり、運気の流れを虚空に見出そうと目を泳がしたりするよりは、八本の足で飄々と生きる我が家の壁面の哲学者に話しかける方が効き目がありそうだと、早くも晩年を迎えつつある古本屋は、本気で、そう思うのです。八ってのが、素晴らしい、蜘蛛さん、わたしは、それに、賭けるよ、ほいっ。ーー願い、といっても、もう自分でも何を願っているのかさえ判らない、けれど、もうちょっと、なんかすごいことが起こっても良いのではないかなせっかくだもの。誰も、しないかもしれない蜘蛛頼みは、案外、効くかもしれない、と、四十の本屋がひいふうみいよういつむうやあ、幾度も幾度も数えなおす蜘蛛氏の八本の足はぴくりとも、動いてはくれないのですが。
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