数日前のブログをお読み下さったお客様より「木犀」が収録されている尾崎翠全集をお送りいただきました。お手数にも関わらずそれに見合う買取額ではなかったかも知れませんがご理解下さい。本は、大切に個人蔵とさせていただきます。ありがとうございました。
「木犀」久しぶりに読みました。以前と変わらず屋根裏の女の子の言葉に共鳴することができました。細部は忘れても、時折その存在を思い出すのは、言葉の中に素直に響いている`切なさ`のためなのだと感じました。忘れてしまったように思えても、時折、何かのはずみでふと、屋根裏の女の子の言葉を思い出しそうになる。けれどもそれは`切なさの`遠い谺のようなものとして記憶されているようで、頭の中ではっきりとした形にはならない。もやもやしながら、なにか親しいものを探すような気持ちで、それがどんな言葉であったのか記憶を手繰り寄せようとしている、そういう時は、やはり、わたしもなにか切ない気持ちを抱えているようです。
木曜。今日はチャアリイが衆楽キネマの幕から消えてしまう日である。私は彼に別れを告げに出掛けなければならない。夕方の六時になって火葬場の煙突が秋の大空に煙を吐き初めると、私は部屋にじっと坐ってゐられなくなった。私は三日前の夜からチャアリイを戀してゐるのだ。
……。
家の近くまで來てふと思ひついて這入った場末の哀しい衆楽キネマで、月おくれのゴオルドラッシュをやってゐた。擦り切れた古い寫眞の中でぶるぶると踊るチャアリイのポテトオが胸に迷ってゐた涙を素直にほぐしてくれた。そしてN氏の影の代りにチャアリイが私の心臓を捕へた。
チャアリイと牛に似たN氏を思う`枯れかかった貧乏な苔`の言葉。
人の感情の中で最も恣意的でないものが`切なさ`である、と云ったのは誰だったでしょうか?
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