「汝は真の目ざめへと目ざめたのではなく、前の夢へと目ざめたのだ。その夢はまたもう一つの夢の中にある、というようにして無限につづく。無限とはすなわち砂の数である。汝が引きかえさねばならないであろう道は果てしなく、汝はほんとうに目ざめるまえに死ぬであろう」
ボルヘスーー神の書跡 土岐 恒二訳
脈絡もなく本の中のそんな箇所を思い出しながら阪神高速東大阪線を森ノ宮方面へ、夕日に沈むビルビルをほんやりと横目に。
白鵬が照ノ富士に敗れる。歓声に、何処か行ってた意識が車内に戻る。
ーーやっぱり。今日は負けると思てた。そうならな、おもんないもんな。ーー
そう思っているわたしにわたしは目ざめた、ということか。そしてそのわたしを夢見ているわたしがまだいて、さらにそのわたしを夢見ているわたしがいて、
ーーしかし、そうやとして、わしはなんちゅうしょうもない夢見とんねん、なにが負ける思てたや。ほんまに。ーー
あーほー。
夢夢を超えてこの呟きが、目覚めと夢見の無限の連鎖をわたって反響し続けたとしても、奴には届かんということか…。
悔しいけど、とりあえず果てしない道は置いといて、森ノ宮で高速降りさせてもらうわ。まあ、これもしょうもない夢やけど。