古い町家のお話は今日で終わりにしよう。水濡れた書物の、もう読まれることのない湿潤な言葉のことは忘れよう。これからは出来るだけ何も持たず、乾いた場所で突っ立っていることにしよう。そこでいつか、わたしは土の煙をあげて崩れるだろう。乾いた土人形の崩壊、何も持たぬから笑って何もないものになれる。誰かがいつかそこを通って、乾いた砂を拾い上げるだろう。その砂を、何処からか吹いてきた風にあずけるだろう。
書を捨てよ、町家を出よう!
古本屋の日記 2014年11月6日