象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

一生モノにも限界がございます。

たいした数ではありませんでしたが、売る本も個人の蔵書もそのほとんどを失いましたので、古本屋としてはどうも落ち着かない毎日です。商売も、読書も出来ない。やれることが少ないので火事に関連した手続きなどでお役所参り、あっちの書類をこっちへ、こっちの手続きの次にまた別の手続き……なにかカフカ的な迷宮に迷い込んでしまいそうです。本に囲まれていてこそ、この不安で不条理な世界との距離をあるていど保つことが出来、安心して毎日暮らすことが出来るのだと思い知らされました(まあ、それも錯覚でしょうが)……。せめて、枕元に積読ための本が欲しい。かといってまだ市場へ顔を出す余裕はないし、パタリと買取りの電話もなくなったし……しょうがないので目についた新刊書店に入り、乏しい小遣いをはたいて、上下巻合わせた厚さが9cm、総ページ数2200ページ、定価4200円という、超ど級の文庫本「荘子ー全注釈」を購入いたしました。2014年の5月に講談社学術文庫から発行された、数ある荘子関連本の中の決定版、と云ったところでしょうか。下巻の帯文に「一生楽しめます」……なるほど、これは確かにそうかも知れない、頼もしい。天地を見ても、背表紙、小口から見ても、揺るぎない。うん、まあ、ただし、火事にあわなければ、ね。

古本屋の日記 2014年10月14日