自己言及の日記は意味不明である、と家の人に云われる。確かに、自分で読んでもあんまりよう解りませんが……。
枚方の病院帰り、京橋で今日は`まつい`、ではなく京屋本店。熱燗湯豆腐ほうれん草。ポテトフライはありませんがほぼ完璧の布陣。「河原ノ者・非人・秀吉」を読みながら一杯二杯。なぜ`まつい`ではないかというと立って飲んでいるのがしんどいから、まあ、二度づけなしの串カツはありませんが。飲み屋でわざわざ分厚い本をとも思いますが……ざわついた店内のほうが家で一人で読んでいるよりも集中して読める、飲める、近代人であるわたくしは、いつでも病み上がりの群衆の人であります。
ほろよいになり古い資料からの引用が多い河原ノ者が読みづらくなり、スマホで時事ニュースを肴に。この次の朝ドラの主人公が村岡花子であることを知り、無性に`赤毛のアン`が読みたくなる。Anne of Green Gablesは、小学六年から中学一年にかけての愛読書であります。男子で、アンが結婚して子供を産むまでのシリーズを読み切ったのはわたしだけではないかと思います。奇怪な、卒業制作の散文集の一部は、アン・シャーリーに捧げられていたのを思い出し熱燗を猪口につぎながらじんわり涙。いてもたってもおられず、京阪モールの紀伊国屋で、税込み700百円也で新潮文庫を購入す。
「あの、グリン・ゲイブルズのマシュウ・クスバートさんですか」……ちょい略。
「お目にかかれて、とてもうれしいわ。もう、迎えにきてくださらないのじゃないかと、心配になってきたもんで、どんなことが起こったのかしらって、いろいろ想像していたところだったのよ。もし今夜いらしてくださらなかったら、線路をおりて行って、あのまがり角のところの、あの大きな桜の木にのぼって、一晩暮らそうかと思っていたんです。あたし、ちっともこわくないし、月の光をあびて一面に咲いた桜の花の中で眠るなんて、すてきでしょうからね。小父さんもそう思わない?まるで大理石の広間にいるみたいだと想像できますもの。そうでしょう?それに今夜いらしてくださらなくても、明日の朝はきっと迎えにきてくださるとおもっていたのよ」
アンがマシュウ・クスバートにはじめて話した言葉。
花のなかで一日は終わる……。さめない、夢みたいに さめない、夢みたいに。
(アニメ 赤毛のアン主題歌 世界名作劇場より)