歯医者。どうだあんたの治療が悪かったのじゃないかという顔で挑みましたが先生は平気の平左、その隣の歯に原因有り、と云いつつおかしいなと首をかしげ、本格的な治療は次回から。ーーこちらも首を傾げながら外へ出ると、薄着のため少し寒い、し、痛いです。ーー俺なんか生きていてもしょうがないやろ、と云う声がどこからか聞こえた気がしましたが、それは単に頭に浮かんだ言葉の羅列を知らぬ間に音声化したけでありましょう。わたし自身による作為にわたしが耳を傾ける、その言葉にうまく騙されてはっと何所からの声だろうかと辺りを見回すと冬の気配。肩をすぼめて歩きはじめ、このままわたしの中身が腐り果てどろりと溶けて無くなってしまえば楽だなと思い、まあその前にもう一杯熱燗を飲もうかと。
冬の初めの歯医者さん。
古本屋の日記 2013年11月6日