午後、道具の先生のお店を訪ね、お宝を巡る面白き話に時を忘れる。嘘か真かわからぬ伝承や古文書をたよりに、全国のあちこちで地面を掘り続ける男達のお話。「横で見てたらほんまにそんなこと書いてあるかと思うけどな、本人に云わしたら宝の在処が書いたある云うてきかへんねん」……。古道具屋だとか古美術商だとか、もはやそんな何者かではない、まさに、トレジャーハンター、地下に眠るなんとかの埋蔵金の夢に憑かれた亡者。生活の全て、人生の全て、人間の全てをなげうった穴堀のファントム。ユーモアたっぷりに話されるそんなおっさん達の姿に思わず笑い転げてしまいましたが、帰りの、夕暮れの阪急電車の中で、常に未来へと希望をだらしなく先延ばしする古本暮らしの自分を発見し、こら、人ごとちゃうなと。
ああ、亡霊どもが、きょうも幻の地面を掘るスコップの、寂しい音が聞こえる。