支那のさる高名な詩人の名をうっかり口に出して読んでしまい、またまた、空堀の漢字博士に、間違いを指摘される。うすうす、間違いだろうとは思っているのですが、つい、ぽろりと、そのまま読んでしまって、まさに鬼の首を取ったかのようにそれを博士に訂正されその訂正をシワの少ない脳の中になんとかすり込もうとするのですが結局そいつはどこかにすり抜けてしまうかあるいは三半規管で迷子になった霧、もやもやと、元の間違いのままいつかまた博士の前で口を滑らせてしまうんだろうねえ博士。そんな、漢字のかの字も知らない古本屋のわたしが、たとえば今読んでいる「悪霊」をどのように読んでいるのかなんてほんとうに空恐ろしいチンプンカンプン。登場人物の名はわかりやすいカタカナ表記だからいいようなもののそれ以外各所に散りばめられた漢字のほとんどを読み間違えているとすると、果たして、わたしの読んでいる「悪霊」と博士の読む「悪霊」はどれほど違う物語になっているのか……笑っているのに泣いている、憎んでいるのに愛してる……それはそれでいいような気もしますが、あるいはそのように読み方は真逆だとしてもやがて遠くで出会い一本となる長い長い線路のようにその魂においては一致しているのだろうかねえねえ漢字博士◀ってなんて読むんだ、そうだ、そもそも、恐怖をもって今思い到るのは、果たしてこの汚い文庫本の表紙の文字「悪霊」をなんと読むべきなのか?はたして●●●●●であっているのか。タイトルからして全然間違っていたらいままでの読書はどうなるのか?ドストはんは?わしは?本だけならまだしも人生のすべてが読み間違いだとしたら?
ーー今日の悪霊ーー
漢字問題のため先へ進めません。