象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

墓標。

たいして儲かりもせず、またそうした金銭的な栄達を望みもしないお気楽暮らし。世間様から見れば毎日ぶらぶら遊んでいるようにしか見えない(らしい〜店の前でばったり出会った見知らぬおじさんの意見)、毎日、お祭りの、前日のその前の日ような古本屋暮らしでございます。ふと、こんなんでええんやろか、と思い、ええとしてもほんま嘘みたいに暢気な暮らしや、市場うろうろして、毎日人とくっちゃべって、酒飲んで本読んで、たまに映画とハイキング、こんな暮らしは、はは、これはこれでミラクルやと、一人ささやかに熱病ダンスダンス。くるりと回ってふと気づけば、知らぬ間わたしは独ぼっちの小さな子供になっていて、服はブカブカスボンはガボガボ、そうしてもうひとまわりあたりを見回せば、人の誰もいない、音のない、暗い夜道、持ちきれない程の大きさの、巨大な黒い本をなんとか運ぼうとしている。少し引きずれば、少し、動く、この本ーー市場やお店で賑やかに人と話していたのはこの本とは別の本の中での事。過ぎ去った日々と云うよりもわたしの夢であったのかもしれずーー少し押せば、少し、動く、この本の中に何が書かれてあるのかわたしにはわからないのですが、ただひとりで、すっと向こうのすぐそこのあの終わりの場所にまでは運びきらなければならないのです。

古本屋の日記 2012年12月2日