お店というか我が家の入り口付近から奥の台所にかけての一階部分の約半分がなにやらわからぬさまざまな紙類の散乱によって、埋め尽くされている。本というよりも、紙。それと、諸々の、古道具と云うかガラクタというか……その、なにか。半分くらいは棄てるべきである、と思うものの、そこは古本人情、古物屋人情、そんな、冷たい事、はなかなか云えない。斜めになった紙の塊の上にさらに段ボール箱を積み上げる。整理する能力の欠如、というよりも、散乱した状態への、偏愛。ぐちゃぐちゃの中から、やがてなにかすごいものが現れるのじゃないか、そう、思い、自分を、今日は、赦す。
(月曜社 叢書エクリチュールの冒険 モーリス・ブランショ著 中山元訳 書物の不在)
紺色のページに銀の活字ーー「書物の不在」というタイトルの惹かれて、20年ぶりくらいに、ブランショの書物を購入する。きっと、読んでも、なんにもわかんないでしょうが、文字が、発光するような感じがいい。
巻頭。夜のような紙の空間の隅っこに、2行。
「みずからに問いかけてみよう。問いという形にまでいたらない
ものを疑問点として掲げてみよう」
ページをめくるとマラルメの言葉。
「書くということ、この気違いじみたゲーム」
ブランショが引用するマラルメ、ここで、もう、(カッコイイノデ……)満足。理解できなくても、あとは、発光する文字、美しい行の流れを、眺める。