謎めいた女の……。
どことも知れない浜辺に座って天の者とも地の者ともまた底知れぬ海の者とも知れぬ女が二人。薄衣に白い乳房が透けて見える。砂浜に滲んだ墨のような松の影、転がる桶から流れる水、何かの象徴めいてはいるけれどそれを読み取る事は出来ない。女のもつ着物(なんというのでしょうか?)と烏帽子は、もはやここにはいない思い人の忘れ形見でありましょうか?わたしには煌煌とした月明かりの下で二人の鬼女が心を尽くしても靡かぬ男を食らってのち繰り返す波音に心を洗いながら愛しき男の想い出話に花を咲かせているようにも思えるのですが。二人は、永遠に微笑んで、話が尽きることはない。
古本屋の日記 2012年7月2日