近頃なんやかやばたばたしていて店の中は荒れ放題。明日は来客があるので少しでも片付けようと朝から奮闘するも、途中から、昨日買取らせていただいた戦前の新青年にハマってしまって……。
「まだ生きているのと同様に温かい女の死體を仰向けに引つくり返して見ると、どんな風にして車輪にかかつたものか、頭部に残つているのは片つ方の耳と奇麗な襟筋だけである。あとは髪毛と血の和え物見た様になつたのが、線路の一側を十間ばかりの間にダラダラと引き散らされて来ている。その途中の處々に鶏の肺臓みたやうなものがギラギラと太陽の光を反射しているのは脳味噌であらうか、右の手首は……」
(新青年 昭和四年十月増大號より)
夢野久作の克明な礫死体の描写や竹中英太郎の挿絵に引き込まれてパラパラとページをめくりっているうちに、チャリで、ツブシを、運ぶはずであった古書会館が、もう閉っている、時間。