象々の素敵な日記 古本屋の日記

象々の素敵な日記

誰もいない道。

「あれは亡霊が桑の葉の匂いをかぐころ」

〜稲川方人 われらを生かしめる者はどこか〜冒頭部

 

三十五年前に亡くなったおじいちゃんと十五年前に亡くなったおばあちゃんと七年前に亡くなった幸子ねえちゃんにもう二度と会うことはないのだということ、そう、それを、今頃になって、ほんとうにさみしいことだと、思う。長尾病院につづく土道の途中にあった小さな家の前で、皆で、写真を撮った、あの光は、今もあるのに、その道にはもう誰も立っていない。

古本屋の日記 2012年5月15日