市場で、
ル・コルビュジェの本を売り、ル・コルビュジェの本を買う。
わたしはル・コルビュジェの美しい建築についてなにも詳しい事は知らないしましてや難しい建築理論なんて全くチンプンカンプンなのですがル・コルビュジェの本を見るとなぜか無性に買ってみたくなるのです。あまり儲からなくても、時には、損をしても、L e C o r b u s i e rという素敵な文字の配列ルコルビュジェという素敵な音の響きそれをタイトルに冠した素敵な書物を自分の側に置いておくとなんだか自分がとても豊かな空間に暮らしているような気持ちになれるのです。たとえばヘーゲルやカントの書物を読みもしないのに枕元に置いておくとなんだか自分がとても思慮深い人間になったような気がするのと同じように、相対性理論なんて少しも理解できなくてもアインシュタインのおもしろい顔の写真が載った書物を持っているだけで大体は宇宙の事がわかるような気になるのと同じように、書物には、その意味を理解するのとはまた別の効能があるようです。そのようにありたいと思う自分を夢想することがそのような自分に向かう第一歩なのです。読まなくとも、いつか読む自分の為にそのような書物を身じかに置いておく……。明日にはきっとわたしも難しい書物を理解して、世界についてのほんとうとか世界についての嘘とかに触れているに違いないのです。
(LE CORBUSIER LE GRANDより コルビュジェとアインシュタイン)
(LE CORBUSIER LE GRANDより 海へ向かうコルビュジェ)
コルビジェは海で溺れて死んだ。なぜか?
海が好きだったから。
コルビュジェほどの人は自分の好きな場所で死ぬ事が出来る。
ルイス・カーンは駅のトイレで死んだ。
トイレが、好きだったのか?
ルイス・カーンほどの人でも、計算違いをする、ということか?